スキルセット 広く考える 書評 深く考える 速く考える

【要約・書評】世界で一番やさしい考え方の教科書

長年書評ブログを書いていることもあって、オススメ本を聞かれるシーンが多いのですが…
中には100人以上にオススメした本もあるんですよ。
それが、榊巻氏の「世界で一番やさしい」シリーズなんです。

『世界で一番やさしい資料作りの教科書』と『世界で一番やさしい会議の教科書』は冗談抜きで、100人以上にオススメしてきました。
それくらい、このシリーズが大好きでして、書評記事も以前書いたことがあります。

【要約・書評】『世界で一番やさしい会議の教科書』榊巻 亮

この本で解ける疑問は?

続きを見る

【要約・書評】『世界で一番やさしい資料作りの教科書』榊巻 亮

この本で解ける疑問は?

続きを見る

そして最近、ついに続編が発売されました。
世界で一番やさしい考え方の教科書』です。

『世界で一番やさしい考え方の教科書』とは?

本書を読む前は、正直「思考や考え方の本はいっぱい読んだことあるし、もういいや」と思っていました。
世の中には、「●●思考」と名の付く本が山ほど存在します。
思考については、もう嫌というほど語られつくされている。
これ以上、思考について何を語るっていうんだ…

そう思いつつも、「でも、榊巻氏の"世界で一番やさしい"シリーズか…きっと他の本と違う何かが書かれているはず」と勝手に期待をして、本書を手に取ってみました。

・・・結論、読んで正解でした。
めっちゃ、いい本です。

本書では、論理思考とか仮説思考とか論点思考とかに手を出す前の、もっと手前の話。
仕事の基本動作としての、考え方」について、徹底的に言語化されています。

ロジックツリーとかMECEとかフレームワークやらは、ただのツールにすぎない。
ツールを使いこなすためには、根底となる思考力が必要です。
本書を読むと、思考力が高い人が「自然と無意識的にやっていること」が見事に言語化されています。

話は打って変わって・・・私も以前、コンサルティングファームにいましたが、そのときに、
「なんで?」
「それで?」
「どうやって?」
「まずは、考え方を考えなさい」
・・・と、たくさんのツッコミを受けました。
そして、それらのツッコミをがむしゃらに解決していった結果、気づいたら思考力的なものが「暗黙知」として染みついていました。
気づいたら暗黙知になっちゃってるので、改めて言語化するのが超絶難しいわけですよ。
でも、今回、それらの暗黙知を見事に言語化してくれている本が登場した。
それが『世界で一番やさしい考え方の教科書』です。

本書をざっくり概観すると、次のことが書かれていました。

①まずは認知する
相手が言っている言葉、相手が置かれている状況、相手の発言の意図を「正しく、ありのままに認知」すること。
全てはそこから。

②次に思考する
成果物を出すにあたって解くべき問い、疑問に思った問いを、片っ端から書き出す。
書き出した問いについて、どの順番で解けばよいかを考える。
そして、問いを解く。
解いた問いに対して、なぜ?具体的には?と自分でツッコミを入れて、思考を深める。

③思考に行き詰まったら行動する
「あ、思考止まってんな」と思ったら、すぐ人に相談する、調べる。
それでもダメなら、思い切って休む。
そして、①や②に戻ってみる。

④洞察する
ゴールに直結しない問いを考えてみて、新たな気づきを得る。
それを認知や思考の足しにする。

以上の話は、思考力が高い人が普段から当たり前のようにやっていること。
でも、当たり前ゆえに、無意識に埋め込まれてしまい、なかなか言語化が進んでいなかったテーマでもあります。
それを、どうやって言語化したのかわからないのですが、とにかく超具体的エピソードとともに、シンプルに言語化されている。
読み終わったあと、思わず感動してしまいました。
そして、もっと早く、できれば新卒1年目に読みたかったです。

そんな本書の学びを1枚にまとめてみました。

本書から得た気づき

本書を読んでみて、私なりに気づいた点が2つありました。

  1. 洞察を得るためには、普段から「問い」をストックしておくこと
  2. 思考で足踏みしたときは、すぐ人に相談すること。その際に大事になるのが「教わる力」である

気づき①:洞察を得るための、「問い」のストック方法

本書では、「洞察する」というプロセスが1章を割いて紹介されていました。
洞察とは、「ゴールには直結しない問いを考え、気づきを得ること」です。

ゴールに直結する問いとは、例えば「依頼Xについて営業部を説得するために、どんなポイントを訴求すればよいか?」などが該当します。
一方、ゴールに"直結しない問い"とは、「相手に頼まれても、イマイチ動きたくないときはどんなときか?逆に、"しゃーないから動いてやるか"と思えるのはどんなときか?」などが該当します。
直接はゴールに関係しないけど、でも考えてみると、何か役に立つ気づきが得られそうな問い。
・・・こういう問いから洞察は生まれ、思考がグッと深くなります。

しかし、普段から「直接はゴールに関係しないけど、でも考えてみると、何か役に立つ気づきが得られそうな問い」にアンテナを張っておくのは簡単ではありません。
どうしても、ゴールに直結する問いや答えばかりを求めがちになっちゃいますから。
そんな誘惑に負けず、「直接はゴールに関係しないけど、でも考えてみると、何か役に立つ気づきが得られそうな問い」を見つけるためには、どうすればよいか?
・・・1つの答えは「読書メモ進化論」にあると思います。

詳しくは以下スライドをご覧いただければと思いますが、本を読みながら「新たに解きたい問い」を書き出していく・・・これが「読書メモ進化論」の1つの醍醐味です。
例えば、組織を動かす系の本を読みながら
・根回しはそもそも何のために必要なのか?
・ボトムから根回しすべき場合と、トップから根回しすべき場合の違いは?ボトムといっても、どのミドル層から攻めればいい?
・自社ならではの、根回し勝ちパターンは?
…と、どんどん気になる問いを書き出しながら、本を読んでいきます。
そうすると、洞察のヒントをどんどん貯蓄可能です。

気づき②:思考が止まった時に助けてくれる「教わる力」

本書では、思考していて足踏みしてしまったときに、すぐ人に相談なり壁打ちすることを推奨されています。
これ、特に、経験が浅い分野を担当するとき(特に新入社員時代や転職したてのとき)に非常に大事になるアクションです。
経験が浅い分野の仕事をするときに、10分調べたり10分考えたりしてもわからないものは、もうわからないのです。
そんなときは、潔く人に聞きましょう。

・・・聞かれた側が迷惑では?と思った人もいるでしょう。
でも、聞かれる工数よりも、思考停止して時間を無駄にされた後でリカバリーする工数のほうが遥かに大きい。
だから、聞かれたほうがマシなわけです。
しかし、聞くのにもコツやらマナーがある。それを私は「教わる力」と呼んでいます。
具体的には、以下の5つを徹底する力のことを意味しています。

  1. 10分調べてわからなければ、人に聞くこと
  2. とはいえ、相手の時間を"超大事"にすること
  3. 可能な限り、質問を「具体的」にしておくこと
  4. 自分の理解が合っているかを確かめること
  5. 聞いたことを使った「成果」をきちんと報告すること

この5つを徹底できると、「しゃーないな、教えてやるか」と可愛がってもらえる確率がグンと上がります。
詳しくは、以下の記事にまとめてますので、よろしければ。

以上、最後は話が少しそれましたが、『世界で一番やさしい考え方の教科書』、めっちゃくちゃオススメの一冊です。

  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

-スキルセット, 広く考える, 書評, 深く考える, 速く考える

© 2024 BIZPERA(ビズペラ)-ビジネス書評はペライチで