『うさぎとかめ』の教訓はなんでしょうか?
こう問われると、あなたはどう答えますか?
- 自信過剰で油断をすると、足元をすくわれる
- 真面目に地道に前に進み続けることで、勝負に勝つことができる
ほとんどの方は、↑に似たような教訓を思い浮かべたのではないでしょうか。
もちろん、正解はありません。
ただ、1つ考えてみたいのが・・・
「その教訓、本当に自分の頭で考えましたか?」ということ。
昔、本の読み聞かせのなかで、大人の誰かに教えてもらった教訓を、そのまま鵜呑みにしてないでしょうか。
と、このような問いかけのもとスタートするのが、本書『藁を手に旅に出よう “伝説の人事部長”による「働き方」の教室』です。
『藁を手に旅に出よう』とは?
本書は、『ビジネス書図鑑』などの人気本の著者、荒木 博行氏が執筆した本です。
以前、以下の書評でもご紹介したのですが、荒木氏の本はとにかく「右脳と左脳を行き来する量」が半端ではありません。
読んでもらうとわかるのですが、どの本も「要点を捉えた図解とイラスト」が登場するんですね。
書いてある内容はロジカルなのですが、イラストでクリエイティブに表現されているぶん、頭に刻み込まれやすい。
そこが、著者の本の醍醐味です。
今回の『藁を手に旅に出よう “伝説の人事部長”による「働き方」の教室』は、20代や30代で誰もが直面する「働くうえでの悩み」にフォーカスしている本です。
・・・これだけ聞くと、よくあるテーマに思えるのですが、実は本書ならではの特徴が2つあります。
1つ目は、「若手社員と講師の対話形式で展開していく点」です。
主人公ふくむ新入社員たちが、人事部長の講義のなかで対話を重ね、学びを深めていく。
その様子がリアルに描かれています。
2つ目は、「寓話を題材にしている点」です。
新入社員と人事部長の講義が12限目まで描かれているのですが、いずれの講義も寓話が題材になっています。
例えば、「うさぎとかめ」「桃太郎」「おおきなかぶ」など。
これら寓話を題材に、気づけば本質的な学びへと導かれている。
そんな不思議な力を持った本です。
「おおきなかぶ」で学べる"意外なスキル”
全部で12章あるのですが、そのなかでも一番印象に残ったのが「おおきなかぶ」の章でした。
「おおきなかぶ」は誰もが知る話だと思うので、物語の紹介は割愛しますが、
この「おおきなかぶ」から得られる教訓とはなんでしょうか?
「みんなで頑張ったから上手く行った」だと再現性がない
すぐ思いつくのは「どんな困難でも、力を合わせれば乗り越えられる」といったところでしょうか。
ちなみに、私もまったく同じことを思い浮かべました。
しかし、本書は別の切り口を提示してくれます。
「おおきなかぶ」は確かにめでたいが、
「力技で何とか目標を達成して、それで終わり・・・になってしまっていないか?」
「結果を振り返って、次に活かすために型化しなくていいのか?」
といった点を問題提起しています。
たしかに、「おおきなかぶ」と同じことが、仕事でも起こりがちですよね。
例えば、厳しい営業ノルマを何とか死ぬ気で頑張って達成。
なぜノルマを達成できたかはとくに分析せずに、「みんな一生懸命頑張ったから上手く行った」みたいな適当な振り返りで終わってしまう。
その結果、次の営業ノルマも、特に工夫をするわけでも反省を活かすでもなく、ただ闇雲に頑張る。
・・・こういったことになってはいけない。
これが「おおきなかぶ」の本当の学びだと、本書は教えてくれました。
成長の方程式:成長=経験数×ストック率
そこで、筆者が提示してくれるのが「成長の方程式」です。
成長=経験数×ストック率
経験数は、文字通り、これまで経験した物事の数ですね。
ストック率は、「経験からどれだけ型を学んだか」を指しています。
例えば、営業ノルマを達成したとしたら、
- 営業ノルマを達成できた要因を3つ挙げるとすれば、どれか?(成功要因は何か)
- 成功要因を満たすためには、どんなアクションが必要か?
ノルマを達成できた理由を、こういった論点に分解していくことで、
「自分なりの勝ちパターン」をストックできます。
1度ストックしてしまえば、営業で扱う商材が変わろうと、売る相手が変わろうと、勝ちパターンを応用して、安定して高い成果を出せます。
成長の方程式をさらに分解すると・・・
ここからは、私個人の見解なのですが、
成長=経験数×ストック率
この方程式、もう少し分解できると思うんです。
- 経験数=チャンス数×挙手率
- ストック率=素直さ×地頭力
経験数=チャンス数×挙手率
チャンス数は、目の前に訪れるチャンスの数ですね。
そして挙手率は、チャンスに対してどれだけ手を挙げたかです。
よく「やらない後悔よりやった後悔」という言葉があるとおり、挙手率は高いほうが望まれる傾向があります。
しかし、個人的には、
目の前のチャンスに対して何でもかんでも手を挙げる前に、
一度立ち止まった方がいいと考えます。
というのも、自分の強みが全く活きない分野、
あるいは自分が全く関心を持っていない分野に手を挙げても、
得られる成果や学びは少ないからです。
目の前にやっていたチャンスは「自分の土俵」で勝負できるのか?
この点を見極めてから手を挙げると、成果も出やすくなり、
その結果、新たなチャンスの数も増える。
そんな好循環が生まれるはずです。
ストック率=素直さ×地頭力
これはとある方から教わった方程式です。
ストック率(どれだけ学びを蓄積できるか)=素直さ×地頭力
素直さは、相手から言われたことを真正面から受け止めて、次に活かそうとする姿勢のことです。
逆に素直じゃない人は、何か指摘されても「それ、私のせいじゃないしな」と他責にして、一切受け止めようとしない。
そんなイメージです。
一方の地頭力は、学びを型化する力のことです。
営業ノルマ達成の要因を3つに分解して、またさらに3つに分解して・・・
と、まるで数式のモデルを作っていくような高度な思考が求められます。
これだけ聞くと難しそうですが、地頭力は後天的に身につけられるのでご安心ください。
そのことを丁寧に解説してくれる本がありますので、こちらもよろしければぜひ読んでみてはどうでしょうか。
↓コンサル界隈でも絶賛されていました
以上の学びを1枚に整理すると、次の絵のようになりました。
本書の一番のメッセージは「他人が作った世界観にとらわれないこと」
最後に、『藁を手に旅に出よう “伝説の人事部長”による「働き方」の教室』が一番伝えたかったことを考えてみます。
それは「他人が作った世界観にとらわれるな」ということじゃないでしょうか。
というのも、本書の各章の構成はいずれも、寓話を題材にして
- 寓話から得られる教訓は、一般的にはどんなものがあるか?=他人が作った世界観
- 見方や切り口を変えると、どんな教訓が見えてくるか?=自分で考えた世界観
この2つを行ったり来たりしながら、思考を深めていく内容になっています。
例えば、冒頭に述べた「うさぎとかめ」の一般的な教訓は、あくまで他人が教えれくれた(刷り込んでくれた)世界観です。
そういった世界観を鵜呑みにするのではなく、自分の頭でゼロベースで考える。
この大切さを伝えたかったんじゃないかと、個人的には思います。